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はじめに
この度の東北地方太平洋沖地震による未曾有の災害に際しては、自衛隊の総力を挙げての救援救助活動等、身の危険を顧みず昼夜を分かたぬ必死の活躍に対し、国民の一人として先ずもって心より敬意と感謝を申し上げます。
ところで、世界各地では、依然として領土・民族・宗教等に起因する紛争やテロが後を絶たず、わが国周辺でも領土問題、北朝鮮の核・ミサイルの開発、中国の軍事力の増強等、複雑困難な問題が山積しています。
こうした情勢を背景に、近年わが国では、所謂「有事法制」の整備をはじめ海賊対処法の制定等々、更には適時における「防衛計画の大綱」見直し等を通じて、安全保障政策を推進してきました。
しかしながら、わが国の安全保障を完全なものとするためには、なお解決すべき課題が少なくありません。安全保障は国家存立の基本であり、その基本政策が時の政権や政局によって左右されるべきものではないと考えます。
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりである各都道府県防衛協会等の連合体であり、かねてから「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的として全国運動を展開していますが、この情勢に鑑み、会員の総意において下記5項目について要望いたします。
1 防衛意識の高揚とその環境整備
2 防衛力の整備と予算の確保
3 日米安全保障体制の充実強化
4 国際平和協力活動に関する体制の整備
5 領域警備法制の整備
1.
防衛意識の高揚とその環境整備
国の繁栄と国民の幸福は、国の安全が確保されてはじめて得られるものであり、そのためには国民一人一人が国を守る気概を持つことが肝要であります。
このような考えから、全国防衛協会連合会では、防衛意識の普及・高揚を最大の目的として活動を行っていますが、近時わが国においては自らの国は自らが守るべきものであることを忘れ、そもそも国を愛する気持ちすら失われつつあるように見受けられます。
これは、先の大戦による惨禍があまりにも大きかったこと、平和実現への期待を国際社会に対し過度に抱いていること、戦後わが国の防衛を米国に依存し、幸いにも長期間に亘って平和を享受してきたことなどによるものと考えられますが、その根底には国の基本法である憲法における自衛権と自衛隊についての規定が必ずしも明確でないことが国民の心理に少なからず影響しているものと考えます。
しかしながら、最近では憲法改正についての議論も国民の間で漸次活発になってきており、更に憲法改正に必要な「国民投票法」も既に制定されています。
このような観点から、自衛隊の位置付け、役割を明確にする等、国防の基盤をなし国民の防衛問題に対する意識に大きな影響を与える憲法についても、集団的自衛権の問題も含め、自由闊達な議論が行える環境の整備を推進されるよう要望いたします。
2.
防衛力の整備と予算の確保
近年、わが国では陸海空自衛隊の基幹部隊の縮減や主要装備品、定員の削減が継続され、防衛予算は9年連続で減少しています。しかしアジア周辺諸国では軍備の増強が行われ、中でも中国の国防費は、過去20年間で約18倍に伸びています。
従って、このままでは、わが国防衛の抑止力が大きく低下し、特に周辺諸国が保有している核、弾道ミサイルや近代化を進めている艦艇、航空機、更にはテロ攻撃等への対処に必要な撃破能力や情報収集能力が著しく不足することとなる恐れがあります。
また、定員や装備品等の削減は、すでに国内における駐屯地、基地等の運営にも支障を生じていると聞き及んでいます。
昨年末に策定された「防衛計画の大綱」及び新「中期防衛力整備計画」では、防衛力の整備、運用について新たな考え方と方向が示されました。
わが国が直面する国際環境を考慮し、わが国の平和と安全はもとより国際社会の平和維持に寄与できるものと確信いたしますが、防衛力の整備は確実な実行が特に重要であり、今後はその実現のための着実な整備と予算の確保を要望いたします。
その際、自衛隊の任務遂行に必要な定員の確保と、自衛官が果たす使命に相応しい処遇については十分に留意されるよう要望いたします。
また、同大綱では、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策を検討することとされていますが、武器輸出3原則を掲げ、いわば武器輸出禁止策をとっているわが国の現状では国際的共同技術開発が阻害されるとともに装備価格の高騰に対処できず、ひいてはわが国の防衛産業や防衛基盤の弱体化等を招くことが強く懸念されるところであります。
したがって、この検討にあたっては同原則が本来、国連により武器等の輸出が禁止されている国や国際紛争の当事国等に対する輸出は認めないという限定された方針であったことを踏まえ、その速やかな見直しを要望いたします。
3. 日米安全保障体制の充実強化
国土が狭隘で資源にも恵まれず、核を保有しないわが国が独力で自国の平和と安全を守ることは極めて困難であります。
そのため、世界の超大国であり、基本的人権、自由、民主主義という価値観を共有する米国との間で安全保障体制を維持することは、わが国にとって不可欠なことであります。
因みに、国際連合については、五大国全ての同意を得ない限り重要事項の決定ができない現状では、多くを期待することはできません。
ところで日米安保体制は、わが国の安全を確保し、わが国を含む地域の平和と安全を維持するため、米国はわが国を防衛する義務を負い、わが国は米国に基地を提供する義務を負うという体制です。
したがって日米安保体制の信頼性・実効性を担保するためには、極東における米軍のプレゼンスが必要であり、それには基地の安定使用が不可欠であります。
しかしながら、基地の所在する地元では騒音問題等により基地に対する反対が生じがちであります。この問題の解決は、先ずもって政治が日米安保体制の意義を大所高所から判断して、基地周辺住民に対しては国の安全と平和のための協力への理解を求め、全国の国民に対してはそれに伴う財政負担等への理解を求めるべき性質のものであって、一部の国民世論に委ねるべき性質のものではないと考えます。
かかる面にも思いを致され、安全保障条約締結50周年を経た今日、改めてこれまでの両国間の長きにわたる努力により積み上げてこられた日米安保体制の信頼性の維持向上に留意し、両国間の防衛協力の実効性をより強化し、確固たる同盟関係の構築に努められるよう要望いたします。
4.
国際平和協力活動に関する体制の整備
自衛隊は、平成4年国際カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の一員として、初めて国際平和維持活動(以下、PKO活動)に参加して以来、数々のPKO活動や国際緊急援助活動等の国際平和協力活動に従事してきており、世界各国からも高い評価を得ています。
これらの活動は、これまではPKO活動等の一部を除き派遣の度ごとに、所要の法律の整備、それに基づく準備を実施してきました。
しかしながら、国際平和協力活動が自衛隊の「本来任務」とされた今日では、これまで以上に時期を失することなく派遣決定が行われ、それに基づく速やかな対応が求められます。また、国際平和協力活動の中には、これまで時限的な特別法で対処してきたものがありますが、派遣後の事態の推移により延長を必要とする場合には改めて法的手続きを要し、時には活動を中断させざるを得ないことも生じます。
このようなことから、国際平和協力活動全般を律する恒久的な法律を制定して、自衛隊の派遣に関する基本方針を明確にすることにより、予め派遣態勢の整備が進められ、派遣決定等も迅速に行われるとともに、その活動が中断せざるを得ないようなことにならないようにしておく必要があると考えます。
更に、今後の国際平和協力活動においては、これまでにも増して厳しい治安状況等の中での活動を余儀なくされることも予想され、派遣隊員の安全が確保され、国際平和協力活動が効果的に行われるよう、武器使用基準を他国なみに見直すことが必要と考えます。
新大綱では、国際平和協力活動への対応能力の強化とPKO参加5原則等わが国参加の在り方を検討することとされていますが、この検討にあたっては、国際平和協力活動が今後より確実かつ効果的に実施されるよう、上述の改善を含め法体制の早急な整備を要望いたします。
5.
領域警備法制の整備
新大綱では、防衛力の役割として、実効的な抑止と対処能力の保持を掲げ、「周辺海空域の安全確保」「ゲリラや特殊部隊による攻撃対応」等を重視するとされていますが、今後はテロ、ゲリラ、特殊部隊等による侵入攻撃や、既に幾つかの事例が認められるわが国沿海における武装工作船・不審船等による不法行為、潜航潜水艦の領海侵犯、航空機の領空侵犯等への対応が当面の重要な課題であります。
現行法においては、領海警備は海上保安庁、領空警備は自衛隊の任務となっており、不審船等への対応については法整備が図られ、一応の強化をみたところであります。
しかしながら、領空侵犯機に対する武器使用等の権限が明確でない等その実効性には不安もあります。また、テロ、高度に訓練された重装備のゲリラ・特殊部隊等への対応には、海上保安庁、警察の能力、権限を超えるものがあり、これらに的確に対処するには自衛隊による対処が必要な場合も考えられます。
しかしながら現行法で自衛隊がこれらに対処できるのは、海上警備行動、自衛隊や米軍の施設・区域を守る警護出動あるいは治安出動といったところで、その場合でも、武器を使用して相手に危害を与えることが出来るのは、原則正当防衛、緊急避難の場合に限られているなど強制措置権限が制限されております。
現下の安全保障環境において、 警察行動と防衛行動の狭間にあるような、この種事態に的確な対応ができる実効性ある法の整備が不可欠であります。
このため、これらに自衛隊が有効に対処しうるよう、所謂「領域警備法制」の検討も含め速やかな体制の整備を要望いたします。
おわりに
以上、わが国の防衛態勢をより強固なものとする上で、重要かつ緊急を要する課題として5項目を要望申し上げました。 申し上げるまでもなく国防は国家存立の基本であり、国の安全の確保こそがわが国の平和と繁栄の大前提であり、国民の防衛意識の高まりとともに政治の場におけるわが国の安全保障全般にわたる幅広い議論を期待し、要望事項の実現のため格段のご配慮を賜りますよう心からお願い申し上げます。
平成23年6月
全国防衛協会連合会 会長 佃 和夫
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