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第99号
整理番号 タイトル 投稿者(敬称略)
99号ー1  <防衛大学校卒業式 来賓挨拶 から>
  防大生に求められるノーブレス・オブリージュ
 山崎 正和  (サントリー文化財団理事・
           劇作家・阪大名誉教授)
99号ー2   「立場は違えど~」 安全・安心  小川 けいこ (東京都練馬区区議会議員)
99号ー3   <外国ぶらーり> 韓国  大串 康夫 (全国防衛協会連合会常任理事) 
99号ー4   <ニュースの目>心に沁みこんだ義務感こそ  森   清勇 (星槎大学非常勤講師)
99号ー1 防大生に求められるノーブレス・オブリージュ   山崎 正和 (サントリー文化財団理事・
             劇作家・阪大名誉教授)


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   この記事は、防大卒業生への祝辞として述べられたものであるが、各界で活躍する会員にも理解・実践してもらいたいので、山崎正和氏の了解を得て採録した。

               
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  本日は防衛大学校本科第51期、理工学研究科前期課程第44期、同後期課程第4期、並びに総合安全保障研究科第9期の卒業式にあたり、日本の防衛と世界の平和維持の未来を担う諸君の颯爽たる姿を目の当たりにして、国民の一人として真に頼もしく、また誇りに思う次第であります。心からお祝い申し上げると共に、日本人と全人類の安寧のために宜しくとお願い申し上げます。

 三つの大きな変化さて、半世紀の歴史を誇るわが国の防衛機関にとって、過ぐる平成18年度には3つの重大な変化が起こりました。

 第1は云うまでもなく、防衛庁の独立した省への昇格であります。このことは単に防衛の事務に一段の自由と権限が与えられたというだけでなく、その精神において防衛とその担い手の権威が広く認められたことを意味します。今や防衛は国の枢要な務めの一つとして、外交や内政諸部門と全く同等の地歩を占めたというべきでしょう。このときにあたり、諸君は明日の自衛隊の指揮官として、近代的な職業軍人として、改めて武人の誇りを自覚し、ノーブレス・オブリージュの気概、即ち「尊敬される者の義務感」に目覚めて頂かねばなりません。

 第2の変化は近年の国際情勢と、向上する日本の世界的地位にかんがみ、新しく自衛隊の本来的任務として国際貢献が正式につけ加えられたことであります。我国の自衛隊は過去にもPKO法に基づき、カンボジア、東チモールへ、また時限立法に基づきインド洋、更にはイラクにも派遣され、十分な成果をあげて国際社会の敬意を受けてこられました。
 しかしこれからは、この国際平和維持活動が諸君の本来業務の中心の一つになるのであります。諸君は諸先輩の尊い業績を受け継ぎ、本校で学び取った高い軍事技術と国際感覚に一層の磨きをかけ、海外の厳しい環境に耐える体力と、時には、やむを得ぬ犠牲を恐れない精神力を発揮して頂きたいと、せつに願うものであります。

 最後に、まことに願わしくない、しかし避けがたい切実な第3の変化があることを忘れてはなりません。それは言うまでもなく近時の朝鮮半島の軍事的危機であり、急速に切迫する北朝鮮政府の脅威であります。
 特異な軍事独裁体制を敷き、内外の非難を浴びるこの無謀な国家が我国の近隣にあって、これがかねて我が国に対して特別の敵意を抱き、市民の拉致やいわゆる「不審船」の派遣など、無謀な犯罪を試みてきたことは周知に事実であります。近年はまた国際世論に反して核兵器の開発を目指し、既にそれを保有したと宣伝して、挑戦的な姿勢を強めております。

                  独自の防衛努力を

もとより、我国の防衛は日米同盟を機軸とする外交によって、より具体的には日米安全保障条約の定める共同の努力によって守られるべきのものでありましょう。

しかし、現下の状況を深くかえりみる時、真の防衛努力は日米安保の発動に先駆けて、我国独自の努力によって行われる必要があることを、注意しておかなければなりません。なぜなら当面、もし北朝鮮による挑発が試みられる場合、それは日米安保の発動を引き起こす大規模な攻撃ではなく、寧ろその瀬戸際に迫って、しかも米軍の介入を誘わないような、中・小規模の侵略が企てられると懸念されるからであります。敵は米軍の反撃を招くほど大きくはなく、しかし警察や海上保安庁では対応しきれない、微妙な規模の作戦を企てる可能性が高いのであります。そうすることによって、敵は我国の人身を撹乱すると共に、日米安保の実効性、日米同盟の固さを験 (ため)すことができるでありましょう。

 自衛隊にとって、従って今こそ求められるのはこの種の侵略を防ぐことであり、現実に国民を守ると共に、日米安保の発動を事前に防ぐことだといえます。本日めでたく卒業される諸君の前には、この意味で自衛隊の歴史に、かつてない重大な任務が待っていると申し上げねばなりません。
 すなわち従来の自衛隊には存在それ自体が抑止力となり、訓練それ自体が敵の意図を阻止するという役割があったのに対して、今後はその訓練の成果を現実の行使し、実力をもって、敵に当たる任務が加わる可能性が生じたのであります。

 そのリーダーとなる諸君には、実に大きな期待が寄せられていると言わねばなりません。

 半世紀前に比べて、国民は自衛隊に対して比較を絶する親しみと信頼を覚え、尊敬の念を抱きつつあります。諸君は、それに応えて一層のノーブレス・オブリージュの精神を養い、武人の矜持 (きんじ)、騎士道の精華を一身に帯びて今日からの日々を送って頂きたい。

 言うまでもなく現代のノーブレス・オブリージュは、門地や門閥、血脈に由来する身分の高さに根ざすものではありません。それが真の職業意識、日々の職責の感覚から生まれるということは、先ごろ伝えられた警察官の殉職事件を見てもお分かりのはずです。交番勤務中の警察官は鉄道の踏み切りに迷い込んだ市民を目撃して、身についた訓練と規律に誘われるかのように、ほとんど無意識のうちに死地に飛び込んだに違いありません。

 現代のノーブレス・オブリージュは、その意味で優れたプロフェッショナリズムに基づくと言い換えてもよいでしょう。複雑な技術を使いこなすことに誇りを持ち、技術そのものから規律を学び、その自信によって冷静な積極性を養い、熱狂とは無縁の沈着な勇気を内に秘めることこそ、プロフェッショナリズムの真髄と考えます。危機に臨んで恐れることなく、勝機に恵まれて驕 (おご)らない真の職業軍人たることを、私は諸君の将来に求めたい。

 そして同時に、まさにそれとは裏腹に諸君に求めたいことは、貴重なこれからの人生を専門バカ、職業バカとして送らないことであります。幸い諸君は本校において、様々な科学技術や軍事技術と共に、世界と歴史を見渡す社会科学と人文学を修めてこられました。それらの学問に養われた見識は、必ずや将来、諸君に任務がどんな文明の文脈の中にあって意義を持つか、諸君に人生が何によって価値あるものになっているかを教えてくれることでしょう。どうか皆さん、卒業ののち激務の間にも読書を忘れず、寸暇を盗んで識見を高めるように努力を続けてください。

 重ねてご卒業をお祝いし、武運の長久と日々の充実の久しからんことをお祈りします。

(平成19年3月18日)     (サントリー文化財団理事・劇作家・阪大名誉教授)


99号ー2 「立場は違えど~」 安全・安心 小川 けいこ (東京都練馬区区議会議員)

                              

人は皆それぞれに、生きていく中で、誰かを、また何かを守っています。家族であったり、動物や環境であったり、建物であったり、人によっては「国」を守っている人たちもいます。

そして、誰もが守っている存在に対しては、そこに安全・安心を求めているはずです。

私は、区議会議員という公人としては、練馬区という地方自治体の安全・安心対策に取り組み、消防団員の一員としては、防災活動に力を入れているところです。

ここで少し練馬区自慢をさせてください。我が区では、「安心・安全」を最重要課題に位置付け、積極的に施策を推進しているところです。

 例えば、大震災などの災害時に被害を最小限に食い止めるため、公共施設はもちろん、一般住宅において耐震工事助成を実施しています。そして、実績としては約2ヶ月で、250件を超える耐震診断の申し込みがありました。

 また、防犯の観点から、私が所属する会派の自民党の提案で、練馬区独自の「安全・安心パトロールカー」を24時間、区内中を走らせています。

この車は、白と黒の配色で、警察のミニパトロールカーにそっくりなので、運転中に出くわすと、私自身は何も悪いことをしていないのに「ドキッ」とします。実際に、スタートしてから3年、犯罪率が約2%とはいえ低下したのです。

これからは、練馬区の責務で区民とその財産を守るための施策の一つですが、自衛隊の皆様におかれましては、陸・海・空と日本を守り、時には他国の復興支援も行うという国内外における、そういった任務は崇高かつ強靭な精神がなければ務まりません。心から敬意を表します。

 話は少し変わりますが、最近、日本でも戦艦大和や硫黄島などを題材とした、ノンフィクションの戦争映画が注目されています。

 これらは、世界平和の絶対性及び戦争は繰り返してはならないメッセージであると同時に、近頃希薄になりつつある家族、友人への敬愛の念、そして誰かを、何かを「守る」という人としての責任感を改めて問うているのではないでしょうか。観る側も、そのことが必要なことに気づいているはずです。

 立場はや相手は人それぞれでいいと思うのです。一人ひとりが、守るべき誰かを、何かをしっかりと守る気持ちがあれば、それが今より良い世の中を、そして心が美しい「日本」を創れるのではないでしょうか。

99号ー3  <外国ぶらーり> 韓国  大串 康夫 (全国防衛協会連合会常任理事) 

 久しぶりにソウルを訪問した。タイミング良く、朝鮮戦争以来、分断されていた南北鉄道が56年ぶりに連結再開された日(5/17)であり、「民族和合、平和統一」への歴史的な日として、各テレビ局は、早朝から特集番組を報じていた。統一朝鮮の将来や中国・ロシアとの鉄道連結で、ユーラシア大陸横断などの夢を熱っぽく語り、実況放送でも韓国側始発駅(汶山)での、盛大な記念式典と見送り祝賀風景が報じられていた。

韓国の人々の感激ぶりを尋ねると「国家予算の無駄遣い、政治ショー、北が多大な援助を獲得」などと、否定的反応の方が強いのに戸惑ってしまった。

確かに軍事境界線の重々しいゲートが開かれ、列車が北朝鮮へと進むシーンには誰もが感動したであろうと思ったが、数時間後に、北から戻る列車の通過後に再びゲートが閉まるシーンには厳しい現実を再認識させられた。

この日、1回限りの鉄道連結ショーであったのである。 (常任理事、元航空総隊司令官)

                         
              ”歴史的な日”臨津江に架かる京釜線鉄橋をバックにする筆者。


99号ー4 <ニュースの目>心に沁みこんだ義務感こそ  清勇 (星槎大学非常勤講師)


 朝鮮総連本部の土地・建物が、元公安調査庁長官であった人物が社長を務める投資顧問会社に売却されていた。海自イージス艦の秘密情報が漏洩していた。社保庁の不手際で、<SPAN lang="EN-US">5</SPAN>千万件の年金記録の不備が発覚した。訪問介護のコムスンが、虚偽申請で行政指導を受けた。また、偽装建築や食品の虚偽表示などもあった。

「ノーブレス・オブリージュ」(noblesse)とは、フランス(語)に由来するもので、高い身分に伴う道徳上の義務といわれている。今日の日本では、身分的というよりも学歴や職務上からくる国家的・社会的な責任に伴う義務と言ってよいだろう。

近年、教師の非行、銀行員の乱脈、警察官の不祥事など個々人が関係した事件等もあった。ノーブレス・オブリージュの欠落としか思えないし、毅然とした日本はどこへ行ってしまったかと嘆くことしばしばであった。

然るに、最初の挙げた総連、イージス艦、社保庁、訪問介護、偽装建築・表示問題等は、組織のトップや組織ぐるみが関係しており、影響は国民全体に及ぶ。また国家の威信を著しく毀損するもので、ノーブレス・オブリージュ欠如の最たるものである。

ノーブレス・オブリージュは政治、外交、防衛等、国家の経綸に関わるものに求められるものであるが、国家の存続と国民の安寧は基本中の基本であるゆえに、安全保障や国防・防衛に関わる者には一段と強く要求されていると見なければならない。防大卒業生に、一入強調されるのも故なしとしないのである。

義務感は心に沁み込んでこそ生きる体のものであり、金銭的な代償で推し量れるものではない。しかも、心の問題であるために、その職業を離れた後はスパッと忘れられ、断ち切れるものでもない。定年を理由に「全て終わり、後は関係なし」では、ノーブレス・オブリージュを真に理解しているとはいえない。(本紙編集担当)