
本年6月に山口前会長の後を受け、全国防衛協会連合会、東京都防衛協会の会長に就任致しました。
この度、長年協会に多大な貢献をされた山口前会長の突然の訃報に接し心より哀悼の意を表します。
私は三菱重工業の社長・会長として、戦闘機、ミサイル、潜水艦、護衛艦、魚雷、戦車等の最先端の装備品を製造する仕事に携わって来ました。また現在は経団連防衛生産委員会の委員長、日本航空宇宙工業会の会長を務める関係から、我が国防衛産業のあり方、防衛生産・技術基盤の維持・向上等につき、産業界を代表して政官各界の方々とお話をさせていただく機会も多くあります。
今回縁有ってお話をいただき、全国防衛協会連合会の会長職をお引き受けしたのは、防衛意識の高揚、防衛基盤の育成強化、自衛隊の活動への支援・協力を目的とする当会の活動に、私の一民間人としてのこれまでの経験が多少なりともお役に立てるのではないか、との思いからです。微力ながら全力で協会活動に尽力してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
現在、日本を巡る安全保障環境としては北朝鮮の核や弾道ミサイルの問題、我が国周辺国の軍備増強などの不安定要因が存在しています。一方で我が国の防衛については、厳しい財政事情により防衛予算が漸減する状況が続き、防衛産業が担う防衛生産・技術基盤は弱体化しつつあります。また普天間基地の移設問題が日米関係を考える上で予断を許さぬ難しい状況を作っております。
この様な状況下で、政府の新たな「防衛計画の大綱」の検討に資するため、本年2月に首相の私的諮問機関である「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が設置され、8回にわたる懇談会を経て本年8月末に報告書が菅首相に提出されました。
この報告書では、日本の安全を維持する最善の道として、日本がより地域と世界の平和に貢献する能動的な「平和創造国家」へ成長することを提唱しています。防衛力のあり方として、弾道ミサイル、特殊部隊・テロ・サイバー攻撃への対応、離島・島嶼の安全確保等の多様な事態とそれらが同時に発生する複合事態へ対処する必要性、平素から情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動を含む高い運用能力を明示する「動的抑止力」の重要性を述べています。また防衛力を支える基盤として国内の防衛生産・技術基盤維持の重要性、国際共同開発を可能にするための武器輸出政策の見直し等が盛り込まれ、大きな意義の有る提言であると感じております。更に日米安保体制を重視し、米艦船の防護や米国へ向かう弾道ミサイルの迎撃の必要性も述べられています。
これらの内容が「防衛計画の大綱」に反映され、政策として実行される事を強く希望します。
自民党政権時代にも同様に「安全保障と防衛力に関する懇談会」が設置され昨年8月に当時の麻生首相に報告書が提出されています。しかるに今年2月には民主党政権下で懇談会のメンバーが一新され、改めて今回の報告書が作成されたわけでありますが、結果として今回の報告書でも昨年の報告書の論旨の主要な部分は踏襲され、加えて、更に踏み込んだ充実した内容となっています。自民党政権下でも民主党政権下でも、また委員のメンバーは変わっても、審議の結果出された内容は、基本的なところでは大きな違いは無かったということです。防衛に関する重要な課題とその解決の方向性について有識者・専門家の間で認識は共有されているのだ、と心強く感じています。
更に私が最近感じているのは、日本のマスコミの報道にも変化が見られるということです。過去には安全保障の問題を正面から議論することも憚られる雰囲気がありましたが、最近は周辺国の軍備増強や艦艇・航空機の活動を報道するのみならず、安全保障上の懸念・課題について積極的に論じている、と感じられるのです。これは国民全体の安全保障に対する理解が進んだ結果ではないか、と考えています。
このように防衛省・自衛隊に対する国民の理解が進んだ理由の大きな一つは、自衛隊の方々が我が国の安全保障という重大任務のみならず、国民の生命と財産を守るための災害派遣や、国際貢献等の過酷な任務に日々尽力している事を多くの方々が知り、それを高く評価しているからではないでしょうか。
今後更に国民の安全保障に対する意識が高まるよう、各協会が活発に活動されることを期待いたします。また、当連合会としても自衛隊を支援・協力する活動をより一層強化して行きたいと考えております。何とぞご理解の上、一層のご協力をお願い致します。おわりに各協会のますますのご発展と、会員各位のご多幸を祈念して、私のご挨拶とさせていただきます。
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