守屋前次官の不祥事を機に防衛省の中央組織を抜本的に改革しようとする動きが始まった。自衛隊は大別して制服集団とシビルの集団に区分することができる。
陸海空に必要な予算は制服が財務省に対し行い、査定された予算の執行は一部を除いてはシビルの組織が行う。予算執行の段階で利権が生じ利権のあるところ腐敗が生じるのは政官民を問わずあらゆる組織に共通するところ。
不祥事の再発防止のためなら利権を持つ組織や仕事のやり方を見直せば済むと思っていた矢先に、イージス艦と漁船の衝突事故が起こった。
先の情報漏洩やインド洋での給油問題に加え、この事故により海自のたるみが指摘されるに止まらず、事故報告の不手際、事故についての説明の不手際により福田総理から防衛省の組織そのものに問題があるとの指摘を受け、世論も同じような認識を持つに至り、今や抜本的な改革は至上命題になった感がある。
抜本的改革には異論もあるが改革やむなしとするならば是非考えてもらいたいこと3点について問題提起をしておきたい。
参事官制度の見直し
旧軍においては、陸海軍大臣は現役軍人でなければならない規定があり、さらに軍人は総理はじめ他大臣に就くことも可能であった。
加えて統帥権という錦の御旗が軍に与えられていたため、明治憲法下では軍が強くなり横暴になるのは当然の帰結であった。この反省に立って自衛隊発足時、制服を私服のコントロール下におく趣旨で創り上げたのが参事官制度である。
防衛省の各局長は参事官であり、局長以外の参事官にもそれぞれ所掌任務が与えられており、自衛隊の人事・情報・作戦・兵站全ての分野において参事官がコントロールする権限が与えられている。
昭和60年頃迄、一部ではあるが制服に対し極めて横暴なキャリアーがいた。昔軍人今官僚と言われたのもその頃である。PKOを始めとする運用の時代になりキャリアーの制服に対する態度意識も変わってきたのは事実ではあるが、参事官制度という錦の御旗がある限り内局による制服のコントロール体制は変わらない。
真のシビリアンコントロールとは、政治が軍をコントロールすることであり、内局のシビルが制服をコントロールすることではない。
大臣補佐機能としての参事官制度が必要ならば内局とは切り離し、例えば次官・統幕長・陸海空幕僚長の経験者等をもって新たな参事官制度を創るのも一案であろう。改革にあたってまず検討すべき課題である。
改革は運用を基本とすべし
自衛隊が対応すべき事態が生じた時、迅速的確に対応できなければ自衛隊の存在価値が問われる。対応すべき事態は複雑多様化しかつ即時性が求められため、運用については運用に長けた制服が直接大臣を補佐すべきである。少なくとも作戦運用について、官僚が制服をコントロールしている国は世界中どこにもない。
また制服が運用について補佐する機能は単に防衛省内に止まらず、最高指揮官である総理まで補佐しうる体制であることが望ましい。
さらに改革にあたって留意すべきは、新たな組織を創った場合、その組織が十分に機能を発揮するにはかなりの時間を必要とすることである。このため改革直後にいかなる事態が起こっても対応し得るよう、段階的にしかも十分に時間をかけて行うべきであろう。
制服の処遇改善
参事官制度を踏まえれば、コントロールするキャリアーよりコントロールされる制服を階級的に一段と低く抑えるのは当然のことであったであろう。
防衛省の所謂キャリアーの年間採用数は平均12名であるが、指定職ポストは42ある。これに対し自衛官の防大・一般大の採用数は約600名であるが、制服の指定職ポストは90に過ぎない。
キャリアーは全員が局長級のポストに就くが、制服は局長級に相当する方面総監・自衛艦隊司令官・航空総隊司令官に就きうるのはごくごく限られた人である。
このためキャリアーと制服の一選抜昇任で将官になった者との生涯給与は5千万円以上の差が生じる。また制服組の制度・組織はその任務の特性上、他官庁と異なる特異性を有する。
例えば防衛上災害対処上全国に分散配置されているが、これを他省庁の出先機関と同列に論じてはならないし、戦う集団であるため若年定年制を採っており、一般公務員や公安職と同等に扱えば処遇上自衛官は不利益を被ることになる。
一朝有事に国に殉ずる自衛官を、国や国民はもう少し大事にすべきではないか。このため自衛官独自の給与体系の新設が必要であり再就職援護についても格段の配慮が必要である。
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